「文具の環境配慮」への挑戦

20年以上前から文具業界の未来を見据えて
「資源の循環利用を促進するモノ・サービス・仕組みの開発」は、プラスグループが掲げるマテリアリティの一つです。その取り組みは、2000年のグリーン購入法成立時から始まり、年々進化してきました。文具の未来に向けて進化を続けるプラスグループの環境対応について、製品開発に携わる担当者に聞きました。
プロフィール
ステーショナリーカンパニー CSR本部 サステナビリティ推進部・担当部長
添田 修一
1988年にプラス株式会社に入社。事務用品の商品開発・マーケティングを担当し、2000年のグリーン購入法成立を機に環境対応にも携わる。2009年より環境マーケティング部を立ち上げ、環境法規制対応やカーボンフットプリント※算定・表示ルールの策定などを推進。2017年からはサステナビリティ専任担当となり、社内のみならず全日本文具協会の環境安全委員やサステナビリティ推進委員としても活動している。
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カーボンフットプリント:製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体の温室効果ガス排出量をCO2換算した値。
ステーショナリーカンパニー 製品戦略本部
長谷川 満美
2005年にプラス株式会社に入社し、ジョインテックスカンパニー スマートオフィス企画部で事業企画を担当。中国・上海での語学留学のため退職後、現地日系銀行での勤務を経て、2013年、プラス株式会社へ再入社。ジョインテックスカンパニー 市場開発部での店頭商品の販促企画やMD業務を経て、ステーショナリーカンパニーで商品開発を担当。

Episode 1:私たちの課題認識 「環境価値を提供できない製品は生き残れない」という危機感
2000年のグリーン購入法の成立が大きな転機でした。当時は、既存商品を法律に適合させるため、素材を再生材に切り替えることが急務でした。その後2009年頃から、私自身は仕事の重点を環境・サステナビリティ領域へ移していきました。当時ハイブリッドカーが注目されはじめた時期で、消費者の環境への関心も高まり、社会の空気が明らかに変わってきたと感じたからです。そうした中で、「環境配慮という価値を提供できない製品は、いずれ選ばれなくなる」という危機感が芽生えました。当時の社長(現会長)がよく口にしていた「社会最適」にも、環境への取り組みは合致すると考えるようになりました。
その頃、私はジョインテックスカンパニーに在籍し、オフィス向け通販事業の企画部門に所属していました。ちょうど官公庁や大手企業がグリーン購入法に適合した商品調達を本格化させた時期です。カタログやWebサイト上で「グリーン購入法適合商品」を示すフラグを付けて運用していました。
Episode 2:私たちの試行錯誤 孤独感と焦燥感の中でも、挑戦を肯定する社風に支えられる
ステーショナリーカンパニーとして、力を入れてきた取り組みを教えてください。
まずはグリーン購入法適合のために、プラス株式会社として初めて再生プラスチックの採用に取り組みました。法律で定められた使用割合に適合すると、官公庁への納入が可能になります。しかし、品質や生産工程への懸念から協力工場は当初慎重でした。そこで粘り強く対話を重ね、最終的にはすべての協力工場に理解と納得を得ることができました。
その後、環境マーケティング部を自ら立ち上げました。部員は私一人です。他部署に新しい材料の助言を行ったり、温室効果ガス排出量の算定を開始したりと、地道な取り組みを続けました。孤独感はありましたが、「今スタートしなければ間に合わない」という強い焦燥感が原動力でした。一方で、経営層がこうした挑戦を認めてくれる社風も大きな支えでした。
私は添田さんと開発部門で同時期に働いていたわけではありませんが、その取り組みはよく知られていました。開発現場は日々の業務で忙しく、サステナビリティに関する情報を体系的に追うのは難しい状況です。その中で、正しい情報を率先して調べ、わかりやすく発信してくれる存在はとても頼もしく思っています。直近では、新製品のプレスリリースで、環境配慮の表現について助言をいただくなど、実務の支えになっています。
文具業界全体としてはどのようなことに取り組んできたのでしょうか。
全日本文具協会のサステナビリティ推進委員会では、カーボンフットプリントの算定・表示ルールを業界として策定しました。私自身が過去に算定や第三者検証を経験していたことが、この活動に生きています。現在では、メーカーが流通側から算定を求められるケースも増えています。温室効果ガス排出量のScope3削減の観点があるためです。そこで、企業横断のワークショップを開催し、業界全体で人材育成にも取り組んでいます。

Episode 3:私たちが今、力を入れていること 利便性と環境対応の両立を、業界に先駆けて
文具で特に多く使われるプラスチックの使用量削減についてはどのように取り組んでいますか。
2026年に国の「プラスチック製品の設計認定制度(認定プラスチック使用製品)」が始まりました。プラスチックの使用量削減と、マテリアルリサイクルをしやすい仕様の実現を目指し、国の基準に合致する製品を認定する制度です。同時に、CO2排出量の削減にもつながります。
従来品と同等の強度や使いやすさを維持するのは難しいことですが、当社のR&D本部ではさまざまな実験を繰り返し、課題をクリアする準備がすでにできていました。そこで業界に先駆け、第1号としての認定を目指すことにしたのです。
2026年2月、商品開発の皆さんの尽力によって、「軽量クリアーファイル」「軽量クリアーホルダー」が認定されました。官公庁での需要も高く、商品群全体としてはプラスチックの使用量も多いので、プラスチック削減のインパクトが大きい文具です。
私が開発を担当する個人情報保護スタンプ「ケシポン」では、本田技研工業株式会社(Honda)より、Honda車の廃棄バンパー由来の再生プラスチックを調達し、それを活用した製品を開発しました。再生プラスチックにもさまざまな種類がありますが、今後は使用済み製品由来のポストコンシューマー※素材を積極的に使うことが重要です。今回の取り組みはその先駆けとなるもので、異業種連携による新たな可能性を示せたと感じています。
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ポストコンシューマー:消費者が使用した後の製品を回収し、再利用・リサイクルすること。
認定プラスチックを使用した軽量クリアーファイル(左)と軽量クリアーホルダー(右)
ローラーケシポン箱用オープナー交換式〈限定〉Hondaライセンス商品。本製品では、Honda車の廃棄バンパーを原料とした再生プラスチックを本体メイン部品の約30%に使用。
Episode 4:私たちが進む道 サプライチェーン全体で真にサステナブルな製品を
今後、チャレンジしていきたいテーマを教えてください。
製品開発とサステナビリティは、今や切り離せない関係にあります。例えばケシポンの海外向け製品の多くはすでに紙箱のパッケージに切り替えており、他製品でも紙比率を高めたパッケージ展開を商品の性質も踏まえながら進めています。紙パッケージは環境面だけでなく、ユーザーにとって「今っぽい」製品という印象を与える要素にもなっていると感じています。最終的には、お客様が自然に選んだ製品が環境配慮にもつながる未来を実現したいと考えています。
環境はサステナビリティの一側面に過ぎません。人権や安全といった課題も含め、より広い視点での取り組みが求められています。現在はサステナビリティ調達に関するアンケートを進めており、2026年中の完了を目標としています。その結果を踏まえ、サプライチェーン全体でサステナビリティの追求を進めていきたいと考えています。
CLOSE UP 文具業界初、認定プラスチック基準を満たす商品を発売
2026年2月に発売した「軽量クリアーファイル」「軽量クリアーホルダー」は、経済産業省が定める「認定プラスチック使用製品(大臣認定基準)」の認定を文具業界で初めて取得しました。
「認定プラスチック使用製品」は、プラスチック資源循環促進法においてプラスチック使用製品設計指針に則した製品のうち、特に優れた設計の製品を経済産業大臣が認定する制度です。グリーン購入法適合商品の中で、優先的に調達を推進しなくてはいけないとされる「基準値1」の適合商品となります。
「軽量クリアーファイル」「軽量クリアーホルダー」は、従来品と同様の使い方ができる仕様を維持しながら、本体プラスチック使用量を約25%削減。包装においても、プラスチック使用量を20%以上削減しています。また、プラスチック各部品の素材をすべてポリプロピレンに統一することで、より効果的にリサイクルしやすい設計を実現しました。

環境配慮に取り組みはじめたきっかけを教えてください。