これからの働き方、オフィスについて語ろう。

それでもオフィスに
戻りたくなる理由

対談
GMOインターネット株式会社 取締役副社長 安田昌史氏
プラス株式会社 代表取締役社長 今泉忠久

リモートワークを行う環境が飛躍的に整い、働き方や働く場所がますます多様化。
これからのオフィスはどうあるべきか。そもそもオフィスは必要なのか。
オフィスについて、働き方について、経営者視点における考えを伺いました。

写真左:今泉忠久 写真右:安田昌史氏
撮影場所:GMOインターネット株式会社グループ第2本社(渋谷フクラス)

5月に緊急事態宣言が解除された後、ウィズコロナ、アフターコロナにおける最適な働き方を多くの企業が模索しています。そんな中、これからのオフィスはどうあるべきか、働き方はどのように変わっていくのかについて、今泉社長がプライベートでも親交が深いというGMOインターネット株式会社(以下GMO)の安田昌史取締役副社長と対談を行い、ざっくばらんに語り合いました。

働き方がシフトする今、
オフィスは重要な経営課題。

今泉
この企画が挙がった時、GMOの副社長を務められている安田さんに話を伺いたいと考えました。緊急事態宣言発令後、プラスでも在宅勤務へのシフトや時差出勤などの対応を行いましたが、御社はどこよりも早く1月下旬には在宅勤務体制を取られていました。迅速な対応にも驚かされましたがその後お会いした際に今後も継続するのか尋ねたところ、「実はある程度出社の体制に戻したい。生産性の問題はあまりないが、雑談が圧倒的に減っている」と言われたのが印象深かったです。アフターコロナを見据えたオフィスについての考えをお聞かせください。

安田
オフィスの在り方は重要な経営課題ですよね。GMOはグループ代表の熊谷がパンデミックなどに対するリスクマネジメント意識が高く、リモートワークの環境は以前から整っていたので、観光客が多く感染リスクの高い渋谷に本社を置く弊社は即時在宅勤務体制に移行しました。インターネットはお客様にとってのライフラインですから、ストップすることだけは避けなければいけませんからね。1月末から7月までは原則在宅勤務体制でした。緊急事態宣言解除後は出社率を5、6割に抑えた出社体制とし、今も在宅勤務と出社のハイブリッドな体制を継続しています。

リモートワークは効率的だが、
コミュニケーション貯金が減っている。

今泉
GMOが出社にシフトしたのは意外でした。インターネット業務はリモートワークに適した職種にも関わらず、なぜ出社を選択されたのか。オフィスメーカーであるプラスとしては大変興味深いです。

安田
おっしゃる通り、リモートワークは得意です。チームでの作業もクラウド環境で行えるため、足元の業務はほぼ完璧にまわります。けれどリモートだと非公式コミュニケーションがなくなるんですね。僕らはコミュニケーション貯金と呼んでいるんですけど。例えば、「会議で話したあの件だけど ... 」、「実は今仕事が大変で ... 」といったアイデアの広がりや仲間へのフォローのような、会議前後のちょっとした会話がなくなったことでコミュニケーション貯金が切り崩されていると危機感を感じたんです。

今泉
確かにZoomなどを使ったオンラインミーティングは目的が明確な会議にとっては非常に効率がいい。移動がない分、立て続けに会議を入れることもできますしね。けれどリアルな場で集った時に交わしている雑談などのなにげない会話、コミュニケーション貯金が貯まる機会が奪われている。

安田
そうなんです。感染の拡大状況に応じて在宅勤務と出社を繰り返していましたが、結論としては出社勤務の大切さ、オフィスの重要性を改めて感じました。




オフィスとリモート。
二者択一ではなく、理想はハイブリッド。

今泉
今回のコロナ禍を機に在宅勤務が注目されています。確かに通勤がない分、時間を有意義に使えるし、子育てとの両立もしやすい。個のライフスタイルの最適化といったQOL(Quality of life)の観点で言えば良い面はあります。一方、働く観点で捉えると、オフィスで働いていた時のアウトプットや生産性がどこまで再現できるのかが課題でした。非公式コミュニケーションには雑談から生まれるアイデアや他の人へのフォローなど、ここでしか生まれない価値があります。非公式な部分も含めて再現できればリモートワークもいいですが、やはり難しいですよね。

安田
そうなんですよね。個人で完結する仕事はリモートワークでもできますが、それを超えた部分はどこまで再現できるのか。レバレッジを効かせてさらにいいものを作り上げるようなプロセスは、リアルの場、オフィスでのコミュニケーションのほうが生まれやすいと思います。オフィスとリモート。今後は、仕事内容によって使い分けるイメージですね。二者択一ではなく仕事の最適値を求めてオフィスとリモートの二つを使い分ける、ハイブリッドな視点で捉えることです。

仕事の幸福度は、仲間とともに
同じゴールを目指す達成感にある。

安田
仕事の幸福度ってなんだろうと考えた時に、やはり、同じコミュニティに属し、同じゴールを目指して達成するところに最大の喜びがあると思います。リモートワークとオフィスでは仕事の幸福度が違う気がしますね。例えば、新しく入ってきたパートナー(従業員)がオンラインでしかコミュニケーションをしていない場合、「自分は一体どこに属しているんだろう」と、会社への帰属意識は薄く、仕事への満足度も高まらない。これはストレスになり離職にもつながります。逆のパターンもあって会社に戻る人もいる。これは過去のコミュニティに対して帰属意識がある、つまりコミュニケーション貯金ですよね。長期的な視点で捉えればKPI(重要業績評価指標)に表れると思いますが、現状だけではなかなか判断しづらいと思います。

今泉
私もそう思います。仕事効率で考えるとリモートワークの利便性やオフィス不要論が唱えられがちですが、会社の在り方として長期的な視点で捉えた場合、効率性だけで考えるのは危険な気がします。プラスでは2018年に本社をリニューアルしましたが効率ではなく効果を意識しました。コストダウンを追求して効率的に座席を配置するのではなく、自席プラスαの座席数やカフェスペースのようなサードプレイス、余白のあるレイアウトなど、偶発的な出会いによってコミュニケーションやコラボレーションを促すような空間です。

安田
数値ではなかなか測れない効果はありますよね。どこでも働けるからこそ、オフィスには、コミュニケーションの場としてのウェイトが高まる気がします。長期的なモチベーションは、組織力やチーム力などコミュニティに属しているからこそ出てくると思います。

オフィスは、企業のカルチャーを
醸成する場でもある。

今泉
ところで、GMOは2019年11月にグループ第2本社をオープンされましたが、渋谷にグループ本社、第2本社を構えた理由はなんでしょうか。

安田
渋谷には日本版シリコンバレー「ビットバレー」として、Googleやサイバーエージェント、DeNAなど大手IT企業が集まっています。IT事業のシンボリックな場所ですから企業性やメッセージの発信に相応しいと考えています。優秀なエンジニアも集まってきますし、弊社でもイベントを行うなどエンジニアが集い情報を発信する場所としての価値を持たせています。

今泉
まさにオフィスは企業のカルチャーを内外へ発信する場でもあります。プラスでは、Cultureだけではなく、人と人をつなぎコミュニケーションが生まれるConnect、居心地の良い環境やウェルビーイングの視点からComfort、オフィスにはこの3つのCが必要だと考えています。

安田
どれも重要ですよね。GMOでは、在宅勤務に関するアンケートを取ったのですが、上位に「コミュニケーションスペース(食堂)が使えない」という回答が入りました(笑)。勿論、食事が無料なこともありますが、仲間と一緒にごはんを食べて、人と話すことを求めているんだなと。リモートの寂しさや孤独感がストレスにつながるという声もありましたからね。そもそもコミュニケーションスペースをつくった目的は、本社ビルに入っているグループ会社同士のつながりやコミュニケーションの場、シナジーを生む場を作ることでしたから。ここには3つのCがすべて入っていますね。

プラスならではの視点で、
これからの働く環境を発信してほしい。

今泉
働き方が変わってもオフィスはなくならない、社員が集う拠点として、幸福度や健康度を図るツールとして重要になると考えていますが、我々プラスに求めることはありますか。

安田
オフィスとリモートのハイブリッド、両面の最適化には、老舗であり革新的なことを行ってきたプラスの視点が必要だと思っています。プロダクト開発はもちろん、これからの働く環境の指針となるような発信を期待しています。

今泉
時代の大きな転換期において、オフィスメーカーとして責務を感じています。オフィス=働く場所として広義に捉えることで、私たちの事業の可能性も広がりそうです。今回は対談を快諾いただきありがとうございました。

Guest Speaker

GMOインターネット株式会社
安田昌史 Masashi Yasuda
GMOインターネット株式会社 取締役副社長
1971年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、公認会計士となり大手監査法人に勤務後、2000年にGMOインターネット(株)に入社。 2015年より取締役副社長を務める。
GMOインターネット株式会社
1995年創業。インターネットインフラ事業をはじめ、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産事業などインターネットに関連する様々なサービスを展開。